2024年3月21日(木)の日記(小説)

三十歳になった。 朝起きて、フルーツグラノーラにヨーグルトと蜂蜜をかけた遅めの朝食を摂り、ビカクシダに水をやり、金原ひとみの『軽薄』を読み進め、いま書いている小説を書き進めた。一週間ほど前から恋人は海外へ出張に行っており、ひとりで迎える誕生…

2024年2月27日(火)深夜の日記(なにひとつ説明しなくてもぜんぶわかって。)

2024年1月30日(火) 深夜 * 適当な暇つぶしで男と寝た。ひらいた窓から朝のはじまりのにおいがした。遠くの方に新宿の無機質なビル群がそびえて、死んでるみたいだった。出窓に腰かけて、煙草を吸いながら携帯でSNSを眺めた。パレスチナのこと。ICJが即時…

2023年10月30日(月)の日記

大事なのは群れないことではない。 群れから距離をとること。 群れは体制、組織。ぼくは適応しやすいから、体制に簡単に取りこまれてしまうだろう。 簡単に人を殺す人間になるだろう。 人間は群れの中で、簡単に “群れ” そのものに変わってしまうから。 連帯…

2023年7月30日(日)の日記

手首から花びらが滴っている。はらはらと落ちる。黒い沼がそこにぽっかりと口をあける。手首から花が落ち続け、沼は黒いままあり続け、建築現場の上部には骨組みに囲われた月がぽっかりと夜空に穴を穿つように浮かんでいた。満月。やつがリズムを握っている…

2023年7月2日(日)の日記

いつものファミレスで小説を書いていて、ひと息つこうと思って携帯を見ていたら「優しくて正しい」主張を読んでしまって心がぐちゃぐちゃに傷ついてしまった。なんでだろう、お金払った文章に傷ついたことは一度たりともないのに無料で読める文章で傷ついて…

2023年6月27日(火)の日記(collapse)

赤い砂でつくったみたいな月の玉が、脆くも半分ほど崩れかかった。湿ったぬるい六月の夜は海の底だ。Tempalayを爆音でイヤフォンから流しながら、跳ねるように歩いて帰る。低層マンションのレースカーテン越しの光が、濃い赤と、落ち着いたオレンジ、白色と…

2023年6月13日(月)の日記

ゲイバーで知り合った男と寝た。体と手の大きな、優しくて声のよく通る、朗らかな男だった。 土曜日のゲイバーはカラオケで騒いでいる人々が多くてとてもうるさかった。キンミヤを少しの緑茶で割ってべろべろに酔っ払っていた。隣の卓に座っていたから会話が…

坂口恭平日記 感想

熊本に着いて、空港の外に出ると気持ちのよい風が吹いていた。陽射しの強さに反して涼しさすら感じる。 シャトルバスで市内へ向かいながら植物の多さに感心した。生えている木はどれも力強く、茂った葉を風に揺らし、そのひとつひとつに光が反射してさざめく…

2023年4月7, 8, 9日の日記(死の欲動、生の欲動)

2023/4/7(金)東京 深夜 乗り換え駅で停車している電車。 電車の端の席で仕切り板に寄りかかるように眠っているひとつの肉塊がある。 まだ26歳くらいだろうか。顔には幼さが残る。髪は直毛で全体にボサボサと広がり、眼鏡をかけている。心底安心し切ったよ…

2023年3月3日(金)の日記(ぼくは日記を書けない)

こんばんは。お元気ですか。ぼくはとっても元気です。 きょうはお酒をたくさん飲んで、30分で家に着けるはずが電車を寝過ごしては乗り換え、寝過ごしては乗り換え、を繰り返し、家に着くまでに1時間以上かかった。 酔うと眠くなるから、電車で座ってはいけな…

2023年2月6日(月)の日記

前の座席に座るこどもが、窓外のホテルが目に入るたび、「ほてるー、ほてるー」と言う。斜めに反射した光がこどものやけに白っぽい顔を窓に映し、私の座る席からもその男の子が窓外をみつめる顔がみえる。 新幹線の窓からは、様々なものが流れていくのがみえ…

2023年1月8日(日)の日記(お酒を飲みたい世界線)

高熱をだしてしまったため予定していた三連休の飲み会すべてに不参加となり申した。高熱をだしてしまったため若干頭がらりり申しあげている。らりり申しているついでに新年早々に金原ひとみのらりり小説『AMEBIC』(アミービック)を読んだ。熱で外出できな…

2022年10月27日(木)の日記(矯正、強制、共生、狂正)

人の感受性を矯正しないでほしい。言葉は自由のためにあるよ、誰かを閉じ込めるためじゃない。何かと何かのあいだ、虚無をこじ開けてここが私の自由って、俺の自由って、自分のためだけのフィールドを創るために言葉はあるんだ。言葉の中身も信じないで空っ…

2022年9月26日(月)の日記(許せない/許さない/許す、最近の出し入れ)

すうっとほそい線を引くように、卸したてのテーブルナイフを左手首からひじの内側のあたりまですべらせる。こそばゆいような、心地よい痛みがゆるやかに流れる。すこし時間差で赤い血がぷっくりうきでる。とぎれとぎれの模様を描いて、その赤の鮮やかさにび…

2022年9月19日(月)の日記

その川には水位がわかる目盛りがついている。 両岸は護岸ブロックで覆われていて、そこに垂れ下がるような形で、ビニール状の目盛りが張られている。10cmごとの目盛りで、断続的に降る雨の合間を見計らって見に行くと、2m30cmのところまで水位が上昇していた…

2022年9月8日(木)の日記

だめだ、きょうはもう酔っぱらってしまったので小説を書けない。降参。日記を書く。 朝起きて、携帯を見ると「〇〇さんの44歳の誕生日」とあった。昔つきあっていた人の誕生日だった。 携帯のカレンダーに一度登録すると、毎年リマインドを投げてくれる。特…

2022年7月18日(月)の日記

夏は夜、と綴ったのは清少納言? 性消費納言? ベランダに出ると夏の夜気が体にまつわりついて肺の底に植物の濃い呼吸の音が染みる。煙草を吸う人間だったらきっとこんな夜はベランダで気怠く煙をふかすのだろう、と思いながら干しっぱなしにしていたバスタ…

2022年6月26日(日)の日記

本当に哀しいことは誰にも言えない。 哀しいから誰にも言えないんじゃなくて、言ってもどうにもならないから。 言ってもどうにもならないから、言ってもどうにもならない。どうにもならないなら、言う意味はない。命は美しい。美しいから命が終わることは哀…

2022年5月31日(火)の日記

五月最後の日。きのうはずっとYUKIの漂流教室を聴いていたから、今日も頭の中にその音が流れるんじゃないかと思っていたけれど、どんより曇り空でそのような軽快な曲は流れなかった。 朝は眠い。とにかく眠い。八時間、九時間くらい眠りたい人間なのに、睡眠…

2022年5月30日(月)の日記

朝目が覚めたときから、頭の中にYUKIが歌う『漂流教室』が流れていた。銀杏BOYZの曲をYUKIがカバーしたやつ。家を出てピカピカの朝の光の中、駅までの坂道をこの曲を聴きながら走った。世界はただ輝いている。当たり前の景色の中に、どれだけの幸福が含まれ…

2022年5月29日(日)の日記

電気を点けたままリビングで寝落ちてしまっていたから、朝方ベッドにもぐって眠り直す。起き抜け、自分の魂が上空に浮かんでそのままどんどんと上昇し、大気圏を突破して宇宙空間に飛んでいくというイメージを持った。夢ではないが、想像ともまた違った感覚…

2022年5月23日(月)の日記

自分にとって愛すべき人に割く時間、大好きな読書の時間、言葉を綴る時間、会社から求められる自分の役割を果たす時間、大切な友人と顔を見て話す時間、離れている家族と電話で会話を交わす時間、よく知らないけれど関わってみたい相手へ割く時間。 時間は平…

2022年5月15日(日)の日記

よく知りもしない舌がわたしの体を這うとき、なめくじが進む道行きを想像する。いくつかの段差を乗り越える健気な足跡、ちょうど窓の外は霧吹きから噴霧されたような細やかな雨が降っており湿度が高く、その舌には生きやすい環境なのだろうと思った。濡れた…

2022年4月30日(土)の日記(真夜中)

このあいだ友人の交際相手から、「アイルランドからのお土産です」とミニウイスキーをいただいた。ので、それをこんな夜中にハイボールにして飲んでいる。甘い香りのする、おいしいウイスキーだったけど、「ミニ」だからすぐ飲み終わっちゃった。 5/1に東京…

2022年4月24日(日)の日記

ツツジの咲く季節。どこでも咲く花。躑躅と書いてツツジと読む。髑髏みたい。ありふれている花。ピンク色、赤色、白色、綺麗なのにありふれている。雨に濡れて爽やかそうな若葉、ピンク、赤、白。なんか、めでため。 4月に入って人と会いまくっていたら、「…

ふびん

ふびんになるんですよ、とあの人はいった。本を読んでいる人を見ると、ふびんになるんです。 夜の公園は思いのほか明るく、しずかで、そうしてひそやかだった。あの人は、ひそやかなことを好んだ。昼より夜を、カフェより公園を、はじまりよりも終わりを。だ…

2021年12月28日(火)の日記と孤独と年末

朝、目が覚める。カーテンは開けたままにしており、すりガラスごしに水のような光が部屋にあふれる。部屋の空気が、つめたい。ふとんのなかは、ぬくい。ぬくぬくとした空気と戯れる。 今日は、休みだ。 お休み最高。ふっふー。羽毛布団と、戯れる。たくさん…

27歳で死ぬ

藝術家がどんどん死んでく理由がわかった天才が27歳で死ぬ理由がわかったそりゃあ27歳でそろそろ死ぬわ死ぬんじゃなく殺される何にって周りからの無理解にだって藝術は天才は理解されないから理解されないことが悪いんじゃない愛がないことが問題なんだ藝術…

2021年11月18日(木)の日記

もうどうにも行き詰まって、息詰まって、日記に逃げる。 小説。物語。その構造。むずかしい。 なんとなく感覚で、手癖で、どんどん進むことはできるのだが、構成力。うまくいかない。ごく短い話であれば、なんとなく誤魔化せる部分が、ある程度長くなってく…

2021年11月15日(月)の日記

書く書く書く書く。書かなければ意味がない。 角角角角。言葉は角があっていつだって何かを捨象する。 核核核核。自分の中に深く潜って宝物を探す。捨象されない何かを探す。深く潜るほど辺りは暗くなり、光は鮮やかになる。だいたいは息がつづかず、諦めて…