河原で拾った、まあるい石持ってどこ行くの。
メタセコイアの下で待ち合わせしよう、夕焼けが校庭を照らしてる。
うちに帰ればカレーのにおい、お母さんが待ってるよ。
お墓の前で唱える言葉、涼しい日陰、木々の揺れる音、お父さんがチャンネルを変えたがってる。
すずめのサンバと幼い記憶。
誰も知らない海辺の、あたたかい砂に足跡を残す。
青い空がどこまでも、どこまでも続いてぼくは、どこまでも自由だった。
机の下にもぐって、ソファの陰に隠れて、たくさん泣いたぼくは、まだ子どもだった。
目を背けていたことから、怖くても逃げないで。
過去から目を背けないで、自分から目を背けないで、ちゃんと見つめて。
あなたがいなくても朝は来るけど、心の隙間は埋められないまま。
ほかの何にも埋められなかった隙間。
お父さんに会いたい。
テレビゲームの攻略本、風にふくらむレースカーテン、塩をかけすぎた西瓜、ひんやりとした畳のにおい、縁石に生えた雑草、犬のあたたかな背中、庭に咲く花、雪に覆われた公園、映画を見た後の家路。
もしあの日に帰れるのならば、何をして遊ぼうか、何を話して笑おうか。
素直になれなかった自分を、笑って許しに帰ろうか。
迎えにいこう、幼いあの日の自分を。
迎えにいこう、あなたにありがとうを伝えに。