あれはね

あれはなんだろう

夕陽を映す湖のまたたき

 

あれはなんだろう

夕焼けに目を細める赤子の黒目

 

あれはなんだろう

北の町で生まれ育ったあの子の三つ編み

 

あれはなんだろう

初めての逢引きは石畳に光る水溜まりの夕暮れ

 

あれはなんだろう

乾いた掌は富士山のよう

 

あれはなんだろう

まだ見たことのない、懐かしい景色

 

あれはなんだろう

ぼくらのやって来た場所

ぼくらの還るところ

あたたかで、お婆ちゃんのしわしわの掌

蓮の花の開く永い時間

 

あれはなんだろう

あれはなんだろう

 

ぼくらの覚えている、まだ忘れてしまった灯り

夕暮れ時に、トンビが鳴いた

一匹、二匹

お空に手を伸ばして跳ねる

届かないけど楽しいな、届かないけど楽しいな

ひんちゃかめかちゃ、たったらたったら

トンビが西へと帰ってく

ひんちゃかめかちゃ、たったらたったら

 

あれはなんだろう

ぼくらのいつか、還りゆくとこ