眩しい夏の街角で

ひとり暮らしにも慣れたと思っていたのに

あなたが去った後に、むせ返るような残り香

蚊取り線香を焚いて、子どものように泣きじゃくる夏

 

 

さようならが、いつまでも上手くできない

ぼくは大人になって

いつの間にか大人になって

 

 

忘れたような記憶が

雨に濡れた街に立ち上がる

すべてを振り切って駆け抜ける足が

追い越してきたひとつひとつに、目を凝らして

 

 

夏の光のひと粒を

ラムネの壜に詰めて喉を通った

汗ばんだ手と手を繋いだ

陽炎に揺らいだ道路の向こう側に、未来でも見えるみたいに

 

 

人生は喜ばしいもの、人生は哀しいもの

ぼくはいつも、切なくて泣きそうだ

あなたがいないと、泣いてしまいそうだ

あなたがいてくれると、泣いてしまいそうだ

 

 

紙に鉛筆で何か書きつけるときの乾いた音

線がどこかへと向かう

線がどこかへと向かうけれど、然したる意味はない

 

 

今がこれまでの最後だ

これまでのどこにもなかった今が

新しく生まれた最初の今だ



あなたに出逢えて最高に幸せだ

あなたに出逢えたこと、最高に幸せだ

最高に幸せな今が、過ぎていく

見えないくらい、遠くに行ってしまう

 

 

ぼくは大人になって

いつの間にか大人になって

眩しい夏の街角で、立ち竦んでしまう

眩しい夏の街角で、泣きそうになってしまう