2018-01-01から1年間の記事一覧

あの町 あのにおい あの空気

自信を持ちたい ちゃんと選びたい ぼくがぼくを選びたい 四方が山に囲まれた町で 凍える冬の寒さが空気を満たして 感覚のなくなった体の表面で 目一杯に浴びた星の光 無数の光 あの山に灯るのは 道標だろうか ちゃんと選びたい あなたと一緒にいたい あなた…

浮遊する覆い / 遠い国の話

浮遊する覆い ねえ 別れようとおもえば いつでも別れられるよね私たち 紫の車が光に照らされて 水溜りに浮く油のよう 艶やかに 夜の中 ねえ 意味のない会話を いつまで続けるだろう私たち 道行く人のコートが体に触れて 居酒屋の看板のよそよそしい白さ 夜の…

からまる

こんな風になるなんて、自分でもびっくりしている 突然にお互いが、お互いの世界に現れて どんどん知っていってしまうよ 知っていってしまう あの人はとても自立した人 あの人は他人に期待をしない人 孤独を受け入れているように見えて、だから惹かれた 静か…

人生の勝ち負け

寝て起きると、部屋がオレンジ色の光で満たされていた。 朝陽か、夕陽かもわからない。枕元の時計を掴むと、4時22分を示していた。が、午前か午後かわからない。ベッドの上で、からだを半分だけ起こして、窓の外を見る。 記憶が、浴槽に勢いよく沈めたタオル…

ばかばかしいくらいに甘くて脆いNorth Washington Avenueの思い出

シェーンが私の部屋のドアをノックしたのと、私の腋の下で体温計が鳴ったのはほとんど同時だった。 「カオリィ、起きているんだろ? ジュリエットがご立腹なんだ」 体温計を見ると、99℉を示していた。アメリカ留学に来て二ヶ月。未だにアメリカでの華氏表示…

濡れた手

濡れた手で鞄の中をまさぐる。熱を帯びた手。ここにありはしないかと、沢山の紙屑湿らせては掴んで。皮膚に革のにおいが移るまでべたべたと、濡れたのは私の所為じゃない。 鞄の隙間という隙間に指を這わせて、「それ」を見つけることで頭がいっぱい。 隅か…

満ちる

分かりたい。 分かりたいって思ってる。 でも分からないこともあるんだよ、それでいいって思ってた。 朝の光が昇って目を覚まして、働いて、陽が落ちて。 また布団にもぐって眠るの。 それを奇跡って呼ぶのか、虚しいってうなだれるかは、僕たちの自由だもの…

色恋沙汰

空は高く、夕立を携えた雲が走る コンクリを打つ音、雨宿りする人々 ぼくらなら、間もなく止むだろうこと解りながら濡れて走るさ 緑のモミジが鮮やかに落ちた 夕立はあがって、蒸し暑い今日という日の暮れ このまま繁らないとしても、一向に構わないさ 湖の…

心に恐竜を住ませる

絵を、見に行った。ひとりで。 ホリウチヒロミさんが壁一面に描いた、大きな絵。 原宿のデザインフェスタギャラリーにある、休憩室のような小さなスペースにその絵はある。 私がその絵を見に行くのは3度目だった。最初見に行ったときは、壁の7割くらいが埋ま…

夏の花が咲いていて

夏の花が咲いていて あなたに教えてもらった名前を思い出す 「日本の夏だね」って言ってあなたと歩く いくつもの火をつけては 面白がってすぐ逃げ出した 涙に暮れて笑い転げて 少しずつ気持ちは色を変えて 初恋を結んでは ぞんざいに投げつけて「こんなもの…

眩しい夏の街角で

ひとり暮らしにも慣れたと思っていたのに あなたが去った後に、むせ返るような残り香 蚊取り線香を焚いて、子どものように泣きじゃくる夏 さようならが、いつまでも上手くできない ぼくは大人になって いつの間にか大人になって 忘れたような記憶が 雨に濡れ…

悪魔と天使

僕の人生の一瞬一瞬は、本当は尊いはずで、あなたの人生の一瞬一瞬も、本当に尊いはずで、だけれどときどきそれを忘れてしまう。 あなたと会うということは、僕とあなたの時間を共有することで、ふたつの心の距離が変化し続ける感じがして、人生の一番大切な…

きれいな執着

仕事帰り、新宿駅の南口で待ち合わせをする。 君の髪が随分短くなっていることに気づいて、似合ってるよと言う。ありがとう、と言われる。 テニスのガットを張り替えるためだけにわざわざ新宿まで来たと言う君に、何それ、と笑ってみる。普通じゃない? と君…

KIMOCHI

現代。着地点は俺が決めるから、地に足はついてる ずっと楽しいキブン。身体が変わっちまった、この世のすべては楽しい あの日の身体、忘却の彼方、同じ身体 泥船なんかじゃない、色っぽいこの信念、生意気な身体 だんだん、日々を忘れて だんだん、意味も、…

世界は当たり前に美しくて尊いってことを、忘れないための日記

カーリング女子銅メダル獲得おめでとう~!!! たまたま今日、夕飯を食べに定食屋さんに行って、そこのテレビでカーリング女子の試合が流れてた。 そこの定食屋さんは、中国人かな? と思われる、ちょっとカタコトの元気がいい女の人と、白髪まじりでにっこ…

ぼくの『東京と今日』

"君が居ない 君がいる 繰り返すだけ 君と別れて また別の君を愛した" 大森靖子 『東京と今日』 仙台に生まれ育った。 母も父も大好きだった。兄のことも姉のことも、好きだった。 高校の友達のことも、好きだった。 でも、仙台から離れたかった。 どうしてか…

なかったことにされた I love you について

2年弱くらい前に、大阪の人がぼくのことを好いてくれていた。 彼は大阪から千葉までわざわざ来てくれて、飲みに行ったり、一緒にディズニーシーに行ってトイストーリーマニアに乗ったりした。 幕切れは簡単で、「弄ばれているような気がする」と言われて、…

ここにいて

風邪をひいた。 大学院を卒業するための修士論文を、4日で書いた。 ふつうは1、2ヶ月くらいかけて書くものなんじゃないかな。多分。 僕にとっては、修士論文なんて超どうでもよかったから、なるべく執筆期間を短くしたかった。 ここ最近ずっと忙しくって…

あれはね

あれはなんだろう 夕陽を映す湖のまたたき あれはなんだろう 夕焼けに目を細める赤子の黒目 あれはなんだろう 北の町で生まれ育ったあの子の三つ編み あれはなんだろう 初めての逢引きは石畳に光る水溜まりの夕暮れ あれはなんだろう 乾いた掌は富士山のよう…

感情ちゃんと大丈夫くん

昨年の終わりあたりから、自分の中に「感情ちゃん」と「大丈夫くん」がいることに気がついた。 彼らはぼくの中で日々勝手に遊びまわり、大声で叫んだり静かに座りこんでいたりする。 ぼくは自分の核というか、コントローラーみたいなもので二人の手綱をとっ…

誘惑してくれ

画面ばかり眺める理論家は、世界のなに一つも知らない。 いつも恋に飛び込む気分屋は、馥郁たる世界を知っている。 傍観者でいることが客観的であることだと、一体いつまで思ってる? 上手く立ちまわろうとして、袋小路に追い詰められている愚か者は誰? 本…