失恋したみたい。
人に期待してはいけない、とよくいうが期待なんてしようとしてするものではなくて勝手に生まれてくる感情なんだから、それを無視する方がよっぽど不遜だと思うね。
思ってたんと違った、なんてことを人間に対してとっくに思わなくなった。
幻滅はどんどんしていくべき。幻滅することが怖いのはいつまでも幻の方にフォーカス当ててるからだろ。
「期待」が裏切られたとき、「見くびり」とでも呼べるような感情が生まれる。「期待」が実像よりも過大評価するフィルターなら「見くびり」は過小評価のフィルター。期待と見くびりを延々と繰り返すことでしか実像に近づけない。
実像に近づきたい、という態度こそ俺の中をたったひとつ貫く芯だった。
「信じる」という動詞に目的語は必要ですか?
自分の予期したもの以外が出てきたときに信じられなくなったなら、初めっから信じてなんかなかったんじゃん。
と、言ったら。
愛が重いですね、と言われました。
この愛が重いというのなら、俺は重い愛だけが愛だと思ってたよ。愛に重いとか軽いとかあるんだー、へー。
客観的に、愛が重いですか。そうですか。
表層だけを見ることが客観的というならばそんな客観性は捨てて主観で綺麗な幻を見ますよ、俺は。
幻にいつまでもしがみつく態度が適切な愛だとしたら、前提すら共有できない。
世界、思ってたんと違った。
許さないことで、俺は俺の「好き」を守れたんだ。
実像に近づきたいという叶わない願いは恋で、恋してたのは俺だけで、あんたは恋してなくて。
もう、思ってたんと違った、とか思わないけど、俺と真実のあいだを結ぶ道のりには、誰もいない何もいないということがようやく分かって、だったら俺は誰もいない世界で誰に邪魔されることもなく真実とだけ向き合うよ。ラッキー。
どんだけ身近な人間だろうとここだけは邪魔できない。
真実と、俺だけが、直線の上に。
邪魔すんな、邪魔だから。
もう昨日の君に会えないね。さようなら。
寂しい。
誰もここに追いつかないで。
また、どこかで会いましょう。