2022年9月8日(木)の日記

だめだ、きょうはもう酔っぱらってしまったので小説を書けない。降参。日記を書く。

 

朝起きて、携帯を見ると「〇〇さんの44歳の誕生日」とあった。昔つきあっていた人の誕生日だった。

携帯のカレンダーに一度登録すると、毎年リマインドを投げてくれる。特に消す理由も思いつかないのでそのままにしている。そうか、もう44歳になるのか、と思って、つきあってたときは34歳だったよな、と思って、もうあれから10年が経ったことに気づく。10年かあ。10年とは、受精卵がきちんと自我をもった人間になるくらいの時間だ。それってどれくらいだ。酔っているのでよくわからない。ずいぶんと時間が経ったことはなんとなくわかる。けれど、これが10年なら100年なんてあっという間だ。こうしている間に100年が経つ、と、朝吹真理子さんみたいなことを考える。『きことわ』を読み、『流跡』を読み、そうして『抽斗のなかの海』を最近は読んでいる。彼女の書く小説が好きだから、『TIMELESS』を早く読みたい、が、絶対好きだからもったいなくて、もったいぶって先にエッセイを読んでいるのである。早く読みたいけど、早く読みたくない。なにそれ。贅沢。

 

年森瑛さんのことを考える。集英社がだしている文芸誌の「すばる」の巻頭エッセイが年森瑛さんだった。『春ごろから書いていた小説を完全に削除してしまった。』とそこには書いてあった。え? なにそれ? さらっと書いてあるけど、それってものすごくやばいことじゃない? と思う。世界遺産が燃えました、みたいな、不可逆的で取り返しのつかないなにか。絶対おもしろかったし、そんなものが消失してしまうなんて、やっぱりデジタルってこわい、とか思っちゃう。こんなこと言うと、でじたるでぃばいどだ、とか言われる、けどこわい。デジタルこわい。ぼくも、書いた小説は定期的にバックアップを取らなければいけないな、と思う。年森瑛さんが次に書くものが楽しみだ。好きな小説家が、どんどん増える。うれしい。愛してる、と思う。美しいものが世界に増えるのは、本当に素晴らしいことだ。だいすき。

 

3月に、文学賞に小説を応募した。先月文芸誌を見たら名前が載っていて、やったあ、1次選考を通過していた、と思って、周囲に自慢した。みんな、すごい、よかったね、と言って喜んでくれた。ありがとう、と思ったし、そんなふうに言ってくれてうれしかった。翌月号をみたら、2次選考も通過していて、さらに3次選考も通過していた。びっくりした。応募したあと時間を置いて読み返して、作品としての瑕疵があまりに多いな、と感じていたから。編集部の方に、無駄な作品を読ませてしまって申し訳ないな、とまで思っていた。でも、3次まで通過していた。「あ、通じるんだ」と思った。日常で他人と会話をするよりも、よっぽど強く他人と繋がれた気がした。選考が通過したこと自体は、「うれしい」という感情と正直それほど結びつかなくって、他人が作品を読んでなにかを受け取ってくれたことの方が、よっぽどうれしかった。4次選考を通過していれば、選考委員の小説家に作品を読んでもらえていたことを考えると、3次で止まってよかったようにも思う。

書いたもののできの悪いところをわかっているから、もっといいものを書ける自信がある。来年の3月締め切りの賞に応募して、それで受賞できれば、20代のうちに小説家としてデビューできる。ぎりぎり。20代のうちに小説家になりたい。

 

20代のうちに小説家になりたい。そう思うようになってしまった。書きたいものがたくさんある。小説家にならなくても小説は書けるから、そうして小説を書いていれば幸せだから、早く小説家になる必要なんて自分が幸せでいるためにはまったくないし、小説家に一生なれなくてもぼくは間違いなく絶対一生言葉を綴り続けるだろうけれど、早く小説家になりたい。ここ数日で急にそう思い始めた。そのためにはあと半年もリミットがない。もしも自分の思う美しいものが、ほかの人間にとっても美しいものである可能性があるなら、それに懸けたい。ぼくの恋を公に認められたい。早く小説と結婚したい。ふたりだけの世界でいいと思ってたのに、こんな気持ちになるなんて思ってなかった。ぼくは小説がだいすきで、小説の方はぼくのことが好きかわかんないけど、って思ってたけど、すこしはこっち振り向いてくれてるのかな、小説。早く結婚したいよ。早く小説と結婚、結魂、ケッコン、KEKKONしたいよ。好き、超好き、もっとこっち向いて欲しい、絶対にそこから動いてくれないけど、その動かなさが好き、つれなくても好き、超好き、愛してる。

小説と向き合っているとき、愛されてるって感じる。小説の神様がいて、「ぼくが一番小説のこと愛してるんすよ!!!」って叫んでも、「もっともっと愛しなさい」って言われて、たしかに、まだぼく一番だって言えないかもしれない、だってもっともっと愛せる余地を知ってる、って思って、でもぼくが愛した分だけ小説からも愛は返ってきて、それがわかるから、だからもっと小説を愛せるように成長したいな。もっと深く愛し愛されたい。小説と。言葉と、深くまぐわり合いたい。早く結婚しよう、小説。

なんやこの日記、あたまおかしいと思われそう。まあ、あたまおかしいんだけど。

もう寝よう。おやすみ。